#テレワークしてみた結果 [03]

テレワークの課題を解決し、
生産性を高める方法

これまでの記事では、パナソニック社内外のテレワーク実施者を対象にアンケート調査を行い、テレワークをしてみて感じたその有用性や課題についてレポートしました。パナソニックでは、新型コロナウイルスの影響が拡大する以前から、生産性を高める方法を積極的に模索しており、2020年2月末に社員約2000人の原則在宅勤務措置に踏み切ってからはテレワークの有効活用により一層取り組んでいます。 今回はその中で見えてきた「テレワークの課題を解決して生産性を高める方法」について、パナソニック株式会社の西畑梨那が具体的な実例とともにご紹介します。
(前々回の記事はこちら / 前回の記事はこちら

テレワークの課題をさらに深掘り。
その外的要因と内的要因とは

今回、新型コロナウイルスの影響が急拡大したことや、それに伴い働き方を大きく変えなければならなくなったことは誰も予想していない事態だったかと思います。

パナソニックでは以前からテレワークの活用を積極的に進めていましたが、それでも2000人という規模の社員が一斉にテレワークで勤務するというのは前例のないスケールでした。

この状況を私自身も1人の社員として経験して、前々回前回の記事で示されていたテレワークのメリットや課題には大いに共感・納得しました。

そこからさらに議論を深めていく上で、私としては大きく2つの視点に分けて課題を捉えたいと思います。

1つは、会社のICT環境や社内制度といったインフラ面の問題など、社員個人でどうにかできることではない、いわば外的要因です。もう1つは内的要因、つまり社員1人ひとりのマインド面の視点です。

RINA NISHIBATA

モバイルPC「レッツノート」のマーケティングを担当する一方で、働き方改革ソリューションサービス「しごとコンパス」の立ち上げやブランディングに関わり、働き方改革のエバンジェリストとしても活動中。また、パナソニック社内の生産性向上をめざしたプロジェクトにも取り組んでいる。

外的要因で明らかになった課題の筆頭は、ICT環境の問題でしょう。

多くの社員が一斉にVPN経由で社内ネットワークにアクセスするような状況が発生したことにより、回線が繋がらない、通信が遅延するといったシステム上の不備が顕在化した企業が多かったようです。

さらに、押印作業のオンライン化やペーパーレスといった業務体制が整っていないことによって、業務が止まってしまうなどの生産性が下がるケースも見られたようです。

こうしたインフラの問題は会社全体の意思決定の話であり、なかなか個々人でどうにかできることではありませんが、これをきっかけにデジタル化やクラウド化といった変化が進んでいくんだろうと思います。

また、職種によってはテレワークが難しいという課題もありました。

パナソニックでも開発部門など機材を触らなければいけないとか、素材がなんだとかオンラインでは消化しきれない部分はあります。それはもう、できる範囲でテレワークを活用するしかありません。

ただ、「それは別に毎日である必要はない」というマインドの作り込みが大事なのかなと思います。

先日社内で、今回の在宅勤務をふり返る懇談会を行ったんですが、そこで「出社勤務と在宅勤務の比重は逆転したよね」という意見が出たんです。

これまでは週4日出社して週1日テレワークだったのが、これからは週に1日とか2日くらい出社すればいいんじゃないかという感覚になっている。毎日テレワークでいいという人も結構いて、みんなの意識が変わってきているなと思いました。

まさに、働き方の「ニューノーマル」が生まれつつあります。

article_section1

一方で「緊急事態宣言が解除されたら、出社する必要がなくても以前のように出社するスタイルに戻ってしまった」という話も聞きます。その背景には「仕事=出社すること」みたいなマインドが結構深く根差していて、それによって苦労されている企業も多いのではないでしょうか。

テレワークを阻害する外的要因に関してはどうしようもない部分もありますが、インフラが整って解決策が見つかれば積極的にテレワークを活用していけるように個々人のマインドを変えていく。この内的要因対策は、すぐにでも取り組めることだと思います。

article_section1_2 article_section1_2

社員のマインドを変えるのは、
ボトムアップの地道な活動

会社のインフラという外的要因と、社員のマインドという内的要因。それぞれの課題を解決するには、トップダウンとボトムアップ、双方からのアプローチが重要になります。

パナソニック株式会社の社内カンパニーのうち私が所属するコネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行社長は、本社機能の東京移転やオフィスのフリーアドレス化など積極的に行動を起こすことでチャレンジングな姿勢を体現しており、それが今回の原則在宅勤務措置においても大きく作用しました。

しかし「強いリーダーがいれば、それで成功するのか」というと、必ずしもそうではないと思うんです。生産性や働き甲斐は自分たち自身で見つけていくものですし、働き方がよくなって恩恵を受けるのも自分たちですからね。

会社のインフラ的な側面はトップダウンで変えられる部分が大きいかもしれませんが、個々の社員に根付いているマインドは人から言われて簡単に変わるものでもないでしょう。

私たちが今回一斉にテレワークをしてみて光明を見いだせたのは、トップの力だけでなく、ボトムアップの草の根的な取り組みも大きく作用したと思います。

article_section2 article_section2

というのも、実は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する以前から、CNS社の有志メンバーの間で「爆発的生産性向上プロジェクト」、通称「爆生」(ばくなま)というものを実施していたんです。

生産性を向上するために自分たちができることをやっていこうということで、私たち一般社員が提言者となって社内改革を推進するプロジェクトです。

テレワークはそれ自体が目的ではなく、あくまでも生産性を高めるための手段として活用していました。コロナ禍においては主目的が「事業継続」になりましたが、このプロジェクトはより重要性を増して、現在に至るまで規模を拡大しながら継続しています。

今後はプロジェクトに参加する人をさらに増やしながら、やがて当たり前のこととして定着させることができればと思っています。これがマインドを変えるということであり、ニューノーマルを作るということなんだろうなと。

では、ここからは私たちが実行して効果のあった問題解決方法をご紹介したいと思います。

なるべく計画に時間をかけない。
まず動くことの重要性

そもそも、このプロジェクトの発端にあったのは「社内会議、多くない?」という課題意識でした。

そこから、会議を減らし、会議時間を短くしても成果を下げないために、コミュニケーションの取り方から変えていこうと考えました。

しかし「強いリーダーがいれば、それで成功するのか」というと、必ずしもそうではないと思うんです。生産性や働き甲斐は自分たち自身で見つけていくものですし、働き方がよくなって恩恵を受けるのも自分たちですからね。

会議を減らして時間を生み出すことができたら、学びの時間に充てたり顧客接点を増やしたり事業開発に取り組んだりといったことができるようになります。この「労働時間の再配置」によって生産性を向上するのです。

article_section2

プロジェクトを開始する際には、なるべく計画に時間をかけないように意識しました。PDCAのPを小さくして、DCAを早く回す感覚です。

マインドを変えて新しいことをやってみようというときには、マインドを変えようとするのではなく、まずやってみることが重要です。今回のコロナ禍においても「テレワークをせざるを得ない状況になって、やってみたら意外とできた」と感じた方は多いことでしょう。この「意外とできた」が、マインドを変えていくのです。

とかくこうした変化を前にすると反対意見が出てくるものです。この反発を乗り越えるために準備を周到にやりすぎて、物事が一向に進まないというのもありがちな失敗パターンかと思います。「Pを小さくする」という意識は、ここでも有効にはたらきます。

社長の樋口もよく言っている通り「とにかくやってみる。やりながら考える」ことで様々な活動のスピードアップが可能になることを、私たちはこのプロジェクトで実感しました。

コミュニケーション改革と
会議改革の具体的アクション

具体的な取り組みとして、まず会議時間の基本を従来の60分から45分に圧縮することにしました。これにより生まれた15分を、次の会議の資料を読み込んだり、後回しになっていた意思決定をしたりする時間に充てることができます。

スケジュールはOutlookの予定表に入力することを徹底し、入力と同時に会議の案内を参加メンバーに送ります。このとき、会議の目的が情報共有なのか意思決定なのかアイデア出しなのかを明確にして、会議タイトルの冒頭に情報共有なら「I_」、意思決定なら「D_」、ブレストなら「B_」とつけておくことでメンバー間での意識が統一しやすくなります。

article_section4 article_section4

このスケジュール入力法は会議以外の予定にも応用できます。たとえば個人で作業をする業務でも、誰にも邪魔されずに高度な知的作業を集中して行うときと、雑多で簡単な作業を行っていて話しかけられても大丈夫なときを、ほかのメンバーが予定表を見てわかるように入力しておくとよいでしょう。

これにより、集中しているときに話しかけられて集中が切れてしまうことや、気を使って話しかけにくくなることを防ぐことができ、個人とチーム、双方の生産性向上につながります。

予定表の⼊⼒ルール

article_section4 article_section4

会議の時間を減らしても成果を下げないためには、会議の質を高める仕組みが必要です。

その施策として、私たちは会議ごとに必ずファシリテーターを設置するようにしています。

ファシリテーターは会議の空気づくりやタイムマネジメント、アイデアを引き出す役割を担います。通常、この役割は上長が担うことが多いと思いますが、毎回同じ人がやるのではなく持ち回り制で担当することにしています。

自分がファシリテーターをすると、会議の時間配分や目的が達成できたかどうかなど、会議運営への意識が自然と高まります。持ち回り制にすることでみんなが当事者意識を持つようになり、組織全体の会議力を高めることができるでしょう。

article_section5 article_section5

さらに、私たちは「ファシリテーション匠(たくみ)制度」という仕組みを設けています。社内の人材育成担当と連携して独自の講座を開講し、これを受講してファシリテーションに関するテストに合格すると「匠」の称号が授与されるという仕組みです。

この「匠」の持ち主は、すでに社内に400人ほど存在しています。組織全体でこれだけ会議への意識が作られてくると、会議の効率は上がりますね。

また、この仕組みが広まっていくことで、プロジェクトの認知も拡大していくというメリットもあります。そのため、「匠」は比較的なりやすくしておいて、その中で特に上位の人には「超匠」の称号を授与するというような設計にしています。

「匠」や「超匠」にはオンライン会議用の背景画像やモバイルPCの天板に貼れるシールを提供して、さらに広がりやすくしています。

article_section5

生産性向上のためのアクションはほかにもいろいろありますが、それらを「テレワーク TIPS」として、やはりオンライン会議用背景画像やホワイトペーパーの形にまとめて配布しています。

これも取り組みを浸透させ、プロジェクトを拡大していくのにとても効果がありました。特に、目に入りやすいオンライン会議の背景を活用するのはオススメです。

テレワークTIPS

article_section4
article_section5

以上のようにして、私たちはコミュニケーション改革と会議改革を進めています。

生活の中に仕事が入ってくる。
多様性を備えたニューノーマルへ

テレワークの課題として、仕事とプライベートのメリハリをつけにくい、働きすぎてしまうというものも挙がっています。

これまでは「朝出社して夜帰宅するまでが仕事で、それ以外が生活」というように仕事と生活は別物でした。しかし、これからテレワークが浸透していくと、生活の中に仕事が細かく入り混じった状態になっていくでしょう。「仕事の合間に家事をして、また仕事して、子どもの送り迎えをして、家族で夕食を食べて、子どもが寝たらちょっと仕事して……」というように。

これに対応していくためには「中抜け」をうまく使う、当たり前に使うという習慣を組織内に浸透させていくとよいでしょう。

私たちの中では「中抜け TIPS」というものを作って配布していこうと考えています。

中抜けTIPS

article_section5

組織にはいろいろな人がいて、1人ひとり状況もちがうし、ITリテラシーなどの個人差もあります。当然このような変化に対しても、喜んで変わる人とすぐに受け入れられない人がいます。

そのときに、変わりにくい人を無理に変えようとしても難しいんですよね。ならば、変われる人からやってみて、結果が出てから試してもらえばいい。

それで「意外にできた」という腹落ち感を持てれば、興味のなかった人たちにも徐々に浸透していくと思うのです。仮に、その人にはテレワークが合わなかったとしても、自分で経験すれば周囲への理解が生まれます

これまでは「週に5日出社しない人はおかしい」みたいな感覚があったんだけど、そうじゃないよねと。家にいてもできる仕事はあるねとか、移動時間がないのは効率的だねとか、テレワークのいい面も見えてくる

さらには、電車に乗ったらコロナの感染怖いもんねとか、あの人小さい子どもがいるからしょうがないねとか、多様性を認めることができるようになってくるだろうと。

こうして、まずはできる人から日常のコミュニケーションや会議のやり方を変えてみて、徐々に規模を拡大していくことで組織のマインドも変わる。これが、私たちが見いだした、テレワークを阻害する内的要因の解決方法です。

今後はこの学びを社内だけでなく、社外に向けても伝えることで、働くことをより楽しめる世の中をつくっていきたいです。パナソニックは「レッツノート」や「しごとコンパス」といった具体的なソリューションのご提案を通じて、そのお手伝いをしていこうと考えています。

OVERVIEW

まとめ

テレワークの課題を解決し、
⽣産性を⾼める⽅法

POINT01

テレワークの課題

  • テレワークを阻害する要因には外的要因内的要因がある。

  • 外的要因は、ICT環境や社内制度など会社のインフラに起因しており、社員個人では解決が難しい

  • 内的要因は、仕事や働き方に対する認識など個々人のマインドの問題である。

  • 外的要因がいずれ解決されたときにテレワークを効果的に活用できるよう、マインドを変えていくことが重要

POINT02

社員のマインドを
変える方法

  • マインドは人から言われて簡単に変わるものではないため、強いリーダーのトップダウンだけでなくボトムアップでの地道な活動が必要。

  • マインドを変えるためにはまず動くことが重要。
    「やってみたら意外とできた」という実感がマインドを変える。

POINT03

具体的な取り組み

  • 会議時間の基本を60分から45分に圧縮。

  • 会議の目的は明確にして、事前にメンバー間で共有する
    会議のファシリテーターを積極的に育成して会議の質を高める。

  • その他様々なテレワークのコツをまとめてオンライン会議用の背景などを作り、取り組みを社内に浸透させていく

POINT04

そして
ニューノーマルへ

  • テレワークが浸透していくと生活の中
    仕事が入り混じった状態になっていく。

  • 仕事とプライベートのメリハリをつけるには
    「中抜け」をうまく活用していくとよい。

  • まずは変化に対応しやすい人からはじめていく。
    徐々に参加する人を増やしていき、当たり前のこととして定着させていくことでニューノーマルは作ることができる。