
今回の実践編、テーマは紅葉です。そのイメージ動画を制作するために、言わずと知れた紅葉スポット・栃木県の奥日光へ足を向けました。紅葉シーズンは大変短く、その美しい色を出すには晴れていることが絶対条件。タイミングよく撮影するのはなかなか難しいものですが、今回は天候にも恵まれ、予定通りに撮影を敢行することができました。
今回使用したレンズの一つは、望遠ズームレンズ「LUMIX G X VARIO PZ 45-175mm」です。紅葉した葉を木立の下からアップで撮る場合や、遠くの山々に寄って撮るのに適しています。また電動ズーム搭載で、ビデオカメラのようにスムーズなズーム操作ができるのも特徴です。
標準ズームレンズ「LUMIX G VARIO HD 14-140mm」は、湖面に映りこむ紅葉や、山々の雄大な全景を撮るのに適し、ワイドから望遠までサイズを自由にかえられるのも便利です。全景の次に山肌の紅葉群を撮る場合など、今回の撮影で大活躍してくれました。
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- 品番: H-PS45175
- レンズ構成: 10群14枚(非球面レンズ2枚、EDレンズ2枚)
- 撮影距離範囲: ズーム全域で0.9m~∞(撮像面から)
- 最大撮影倍率: 0.2倍(35mm判換算:0.4倍)
- フィルター径: φ46mm
- 焦点距離: f=45~175mm(35mm判換算 90mm~350mm)
- 開放絞り/最小絞り: F4.0(W端)~F5.6(T端) /F22
- 質量: 約210g
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- 品番: H-VS014140
- レンズ構成: 13群17枚(非球面レンズ4枚/EDレンズ2枚)
- 撮影距離範囲: ズーム全域で0.5m~∞(撮像面から)
- 最大撮影倍率: 0.20倍(35mm判換算:0.40倍)
- フィルター径: φ62mm
- 焦点距離: f=14~140mm(35mm判換算 28mm~280mm)
- 開放絞り/最小絞り: F4.0(ワイド端)~F5.8(テレ端)/F22
- 質量: 約460g
紅葉は大変美しいものですが、その鮮やかさをカメラで表現できないと思っている方も多いのではないでしょうか? そのような方はぜひ、露出補正を活用しましょう。
イチョウなどイエロー系の明るい葉は、そのまま撮るとカメラの自動露出が働き、明るい被写体と判断されます。結果、「絞り」を絞りこんでしまうため、少し濃い黄色に写ります。そのような場合は、露出補正で+3から+5に調整するとよくなります。
黄色いイチョウとは対照的に、モミジやカエデなど光の反射率が低い赤い紅葉の葉は、そのまま撮るとカメラが暗いと判断し、明るめに写す傾向にあります。結果、露出オーバーの明るい赤になってしまい、実際の、深みのある赤色が出ないことがあります。そのような場合は、露出補正を-3から-5で補正し、見た目と同じ明るさになるように調整しましょう。
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露出補正しないで撮ると、露出オーバーで明るい赤に | マイナス補正することで、見た目に近い赤に |
ただし、逆光で紅葉を撮影する場合はその限りではありません。あくまでファインダーや液晶モニターを見ながら調整することが大切です。
一般的に、ホワイトバランスはAWBで撮る方が多いのではないでしょうか?
普段はあまり気にしないものですが、昼間の光と夕日の光では、同じ太陽光でも色の出方が異なります。目で見ても、夕日の下では白いシャツが赤く見えますね。カメラの場合、「夕日」の下でホワイトバランスを「晴天」にセットすると、白いシャツは見た目よりさらに赤く写ります。AWBにセットすると赤みは自動で調整されます。
それでは、紅葉の色を正確に出すにはどうしたらよいでしょうか。理想は、できるだけ「その場の光の状況に合わせる」ことです。天候が晴天であればホワイトバランスも「晴天」に、曇りであれば「曇り」に設定しましょう。
ところが、次のようなケースもあります。天候が曇った時に紅葉を撮ったのですが、ホワイトバランスを「曇り」にすると、見た目ほど鮮やかに色が出ません(写真左)。そこでホワイトバランスを「日陰」に変更して撮ると、曇りで色がさえない状況でも本来の正確な色が出ました。(そのほか、森の中などの一部の撮影でも、紅葉を撮るのに「日陰」の設定を使用しました。)ただし、露出補正と同様、ホワイトバランスも最後はファインダーや液晶モニターを見ながら調整するようにしましょう。
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天候曇り、ホワイトバランス「曇り」で撮影 | 天候曇り、ホワイトバランス「日陰」で撮影 |
マイカラーモードをご存知でしょうか? 写真の演出として面白い機能です。たとえば、モノクロ写真のトーンで写せる「モノクローム」や、色褪せた感じが出せる「レトロ」など、多彩な色表現を楽しめます。動画で使用することは少ないかもしれませんが…紅葉の場合は別です。
私のオススメは「ダイナミックアート」。色を鮮やかにしてくれるマイカラーモードです。紅葉は不思議なもので、肉眼では鮮やかでも画面ではくすんで見えたり、実際の見た目ほど華やかな印象を出しづらい被写体です。その点、この「ダイナミックアート」で紅葉を撮ると、心に感じた通りというべき色の表現ができました。少し派手だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、カスタムで「光の色」「明るさ」「鮮やかさ」をそれぞれ調整できるので、個人の好みで調整してみてください。
紅葉を撮影後、イメージ動画にまとめるにあたり、キレイで写真的な画面の連続でもよいのですが、すぐに飽きられてしまう可能性が高いです。そのため、サイズや時間軸を変化させてリズムをつける必要があります。具体的には、広大な風景と紅葉の山を見せた後に赤い葉の部分カットをつないだり、その葉のアップの次に滝のシーンを見せたりします。サイズや時間軸に変化をつけることが大切です。
今回の動画作例は、奥日光の観光動画ではないことを最初に意識しておきましょう。あくまで紅葉をテーマにしたイメージ動画を目指すので、場所を説明するような説明カットは必要ありません。美しい紅葉やダイナミックな山々の風景を、音楽にのせて紹介するイメージ動画に仕上げましょう。今回の作例では、シーンの変化をどうつけるべきかにも注目してご覧ください。
※今回使用した音楽は「ジムノペディ第1番(管弦楽編曲:ドビュッシー)」です。

いざ編集を始めるとファーストカット選びに迷うものです。今回も同様、紅葉でまとめるイメージ動画、そう決めて撮影に挑んだものの、大変迷いました。結果、ファーストカットにはルアーを楽しむ人とそのバックに広がる山々の紅葉を選択しました。紅葉のイメージ動画という前提から、真っ赤なモミジのアップから入るのがインパクト的によいなど、いろいろ案は浮かびましたが、壮大で秋の静けさを感じさせるこのシーンに落ち着きました。

ファーストカットと同じく、画面下に湖面を入れたサイズで山全体を撮り、2カット連続で見せています。紅葉シーズンの一番よい時期に、しかも天候に恵まれないと撮ることができないカットといえるでしょう。画面をよく見ると、雲の影や、反対側にある山の影に覆われ、同じ紅葉でも色に変化が出ています。そんな光と影による色の変化を狙って撮っています。

前カットのように広いサイズで撮った場合、紅葉していることはわかりますが、感動するほどの色が見えません。そこでこのカットでは山肌に望遠で寄って撮り、紅葉の色が入り乱れるところを2カット連続でつなぎました。最初から見ていると段々と山に近づいていると感じるはずです。
ホテルの見える湖畔のカットは、湖面に白い壁と紅葉が写っています。紅葉の美しさが引き立つという意図から、一連のシーンの最後にこのカットを持ってきました。

紅葉する山々の連続を見た後は、紅葉のアップが見たくなるものです。そこで、地面のキノコ、黄金色のモミジの枝、それに風に揺れる緑色のシルエットが幻想的な、モミジの葉のカットをつなぎました。テンポよく連続で見せることで、紅葉の素晴らしさをしっかりと伝えます。

モミジなどの紅葉のカットは、望遠で寄って一部分だけを撮りがちですが、紅葉が左右に大きく広がるところなどは、動画らしくパンニング(カメラを横に振る)で撮ってみましょう。パンニングのスピードはゆっくり、優雅に見えるように振るのがコツです。

前カットがモミジの木を下から見ているのに対し、このカットでは、木立の枝が重なるように横から撮ったカットを見せて、リズムをつけます。レンズを少し望遠側にして重なる感じを出すのがポイントです。

モミジやカエデの赤や黄色のアップが続いたところで、再び広いサイズに戻し、湖畔の山をゆっくりとパンニングで撮りました。やや斜めに日が当たっているので、木立の重なったところで凹凸になり、立体感がよく出ています。

このカットでは山肌に近づいたサイズを2カット連続で見せています。直前のパンニングのカットと同様、日が斜めに当たる部分を狙うと木立の凹凸や、色の違いがはっきりと出ます。このように同じような紅葉の山といえど、撮り方次第でいろいろな変化を出すことができます。順光での撮影だけなく、日の傾き具合も意識しながら変化をつけた撮り方を研究してみましょう。

山の次は、再び紅葉する木の登場です。逆光で暗くなった背景に、赤いモミジが光るように撮影し、次のカットでは同じモミジを下からアップで撮りました。逆光での撮影は、光が葉を通過して輝いて見え、より立体感を出すことができます。ただこの時に注意が必要なのは、自動露出です。そのまま撮るとやや露出オーバーになり、紅葉の色が薄くなることがあります。その場合は、露出補正をー3からー5でマイナス補正し、見た目通りに見えるよう調整しましょう。

紅葉の名所としても有名な竜頭の滝を、左からパンニングで撮ったカットです。紅葉と滝の流れをしばらく見せた後、右へゆっくり振っています。全体をフィックス(固定)で見せてもよいのですが、今回のテーマを考えて、紅葉をしっかり見せてからカメラを振ったというわけです。

ここからは高度な撮影テクニックのお話です。中禅寺湖の観光船上から紅葉の山の撮影を行いますが、ただ船の移動に合わせて撮るだけなら簡単です。そこで、山々の雄大さをより上手く表現するにはどうすればよいか、撮り方を工夫しました。
この観光船は、湖にある半島のような出っ張りを回りこむように通過するため、その動きを利用するのです。半島の先の木に焦点を合わせ、画面の真ん中に置き、移動しないように撮影します。すると、その木を中心に背景だけが回るように動いて見え、カメラを固定して撮るのとはまた違った、変化ある湖畔の風景を撮ることができます。

こちらも高度な撮影テクニックです。前カットは木に焦点を合わせ、船が回りこむのを利用して撮るテクニックでしたが、このカットでは出っ張った半島を広い画面で回りこむように撮りつつ、途中からズームアウトして山が見えるようにワイドで撮っています。前カットとつなげると、紅葉の部分カットから山々の全景までのロングカットとなり、広大な自然を堪能できるよいシーンになっていると思います。

船上から見た山のカットの続きに、さらに広大な風景をつなごうと、戦場ヶ原の壮大な山並みをもってきました。カラマツなど黄色くなった木と白樺の紅葉があり、背景には白根山がそびえます。真っ青な空に浮かぶ雲を真ん中に配置した構図ですが、その雲がゆっくり動いているのがおわかりでしょうか。

中禅寺湖の湖畔で撮影したカットです。前カットで白根山を見せましたが、このカットでは、雪をかぶったその白根山を見据えながら、望遠でズームアウトしました。撮影当日、観光でこの場所に訪れていた方の多くは、紅葉に目を奪われ、雪に覆われはじめたこの山の存在には気がつかなかったでしょう。それでも、奥日光に確実に近づく冬の気配を、このズームから感じられるように撮ってみました。

寒々とした雪山のカットから一転、ホッと温かくなるような変化をつけるため、再び真っ赤なモミジの木につなげました。葉や枝のアップではなく、観光客が目にするような見上げた感じをイメージし、幹を含めて下から撮っています。

湯の湖から流れ落ちる湯滝を、遊歩道の途中から撮ったカットです。静かな紅葉、それに岩肌を流れる水流を一緒に入れたサイズで撮り、続くカットでさらに近づいて見せることで、真っ赤に燃える紅葉と、激しい水の流れを強調しました。
シーン最後のカットでは観光客の目線と同様に、湯滝の上から下へとカメラを振りおろしています。今回、紅葉のイメージ動画であるため、人工的なモノやヒトは入れないようにしていましたが、ここではあえて、カメラを振り下ろした時に、修学旅行の団体のシルエットが少し見えるように撮っています。人で賑わう日光を、一瞬だけ見せたかったのです。また、全編を通して音楽をバックに編集していましたが、この数カットだけは滝の音を活かしています。

湯滝から流れ落ちた水は中禅寺湖に集まりますが、その湖畔から見た山々を望遠で撮ったカットです。画面下に湖面が少しだけ見え、手前には半島のように出っ張った部分の紅葉が、はっきりと写っています。本来、広いサイズで山々の紅葉を見せるのは難しいものですが、このカットのように手前に比較的はっきりした紅葉を入れ、その背後に多くの山が重なるように構図を作れば、コントラストがはっきりし、紅葉が強調できます。

音楽に合わせるようにここまで作ってきた、紅葉のイメージ動画のラストカットです。ファーストカットを選んだ時と同様、たくさんのカットを前にしながら、締めくくりを選ぶのに苦労しました。結果的に、夕暮れ時の湖畔から遠くのボートがシルエット状に見えるこのカットを選択しました。ラストカットらしく、夕日の影が紅葉にかかっているのが決め手です。